活動報告:2007年
第28回教育文化フォーラム
2007-11-17
第28回教育文化フォーラムin徳島
学力テスト・学力問題を考える
■2007年11月 徳島市
■報告
大林浅吉(香川県退職教職員協議会会長)
■シンポジウム
コーディネーター:嶺井正也(教育総研代表・専修大学)
報告:大林浅吉(香川県退職教職員協議会会長)
:福田誠治(教育総研運営委員・都留文科大学)
:河野睦子(徳島県教職員)
:寿見ひとみ(徳島県保護者)
第28回教育文化フォーラム『学力テスト・学力問題を考える』が、2007年11月17日に徳島県教職員組合と共催で、徳島市で行われた。
1961年から実施された「全国学力調査」(学テ)は、多大な弊害を教育界にもたらし、1966年を最後に中止に追い込まれた。その学テが本年4月約40年ぶりに復活、10月24日、文部科学省は都道府県ごとにデータを公表した。わたしたちが懸念したとおり、事前に学テの準備や対策が行われ、当日は不正行為も一部で発生。障害のある子などが学テの対象外にされたり、成績が下位になった府県では、学テ対策の強化を教育委員会が表明するに至っている。
本シンポジウムは、かつての学テと今回の学テで生じた多くの弊害を確認しつつ、わたしたちが求める学力とは何か、を考えるために開催された。
シンポジウムに先立ち、大林浅吉さん(香川県退職教職員協議会会長)から、40年以上前の「学テ闘争の記録」の報告がなされた。40年前の学テで、香川県は「日本一」になったが、大林さんは、早朝と放課後各1時間の「学テ対策学習」など学校教育が学テ対策一本になった実態を紹介しながら、教職員の評価(勤評)と学習指導要領の法的拘束化、そしてそれに反対する教職員組合つぶしが一体となった戦後の教育史を俯瞰し、今日と同じ事態であることを浮き彫りさせた。
ついで、嶺井正也さん(教育総研代表・専修大学)のコーディネートで、大林さんを含め、福田誠治さん(教育総研運営委員・都留文科大学)、河野睦子さん(徳島県教職員)、寿見ひとみさん(徳島県保護者)によるシンポジウムが行われた。
福田さんは、「競争して学力を上げる」などというのは教育学からきたものではなく、新保守主義(管理)と新自由主義(知識は買う)が一体となったもので、教育基本法改悪体制そのもの。「競争しないでPISA世界一」のフィンランドの教育を紹介。今回の学テ復活の直接的契機はOECDの「PISA2003」であるが、PISAが求めている学力の形成は、文部科学省の今回の学テではとうてい行い得ない。それに類した「B問題」が出題されたが、PISAとは異なるし、これも一斉テストで計られる限り、その意図するところは浸透しない。そもそも、「テストで身につくのが学力」とはいえない。数値されるものは数値させるものしか答えないし、そこしか学ばないので、長い時間をかけてやるものはしなくなるだろう、とした。
小学校教諭の河野さんからは、今回の学テについては学校から保護者に説明する体制はなかったが、保護者から、「学校として受けない選択肢はないのか」「プライバシーの侵害はないのか」「なぜ保護者に説明しないのか」等の質問が出された。他方、県教委から「予想される問題」として練習したらどうかとされたが、学校では対策は一切行わないと決めた。子どもには不安があったし、B問題は難しかった。結果がどのように使われるかが心配である。皆が交じり合って学ぶことこそ、幅広い学力がつく。一緒に考えあうことが大切。それを学テで切捨てるのかと問題提起された。
中学3年生の保護者である寿見さんは、家庭の状況も調べられているが、学校からは事前に何の説明もなかったし、知らされなかった。最初に説明がなかったのだから公表してほしくない。結果は子どもごとに国数の2枚の回答と、そのよみかたが記載された合計3枚を渡されただけ。この学テの結果は子どもにどのように生かされるのか、学力競争は反対である。子どもの「やる気」をささえるのが大事である。そして学びは人と人との関係が大切であると指摘した。
大林さんは、全国平均・香川県平均・坂出市平均と本人の点数が示されたものが子どもに示されたと報告。今回も前回と同じで、教育基本法改悪・教育三法改悪・教員免許制度導入が一体となったもので、求めるものは文科省の求める学力である。来年もやるというのであり、狙いは日本国憲法改悪であるとされた。
会場からは、日本の場合、PISAなどで示される義務教育段階の学力は高いが、成人の学力は世界的にみて低い。このギャップこそ「学力とは何か」の問題だと43年前の学テ闘争で「点数にならない教育」をして左遷された元小学校教員から意見が出された。さらに、「教員が(学テの)おそれを克服することが必要。それはいつでも、どこでも自分の作り出す授業にたじろがないことだ」という意見が教員から出された。
このように、今回のフォーラムは、最初に述べた趣旨「学力テストの弊害」と「学力とは何か」を十分考えられる会になった。
学力テスト・学力問題を考える
■2007年11月 徳島市
■報告
大林浅吉(香川県退職教職員協議会会長)
■シンポジウム
コーディネーター:嶺井正也(教育総研代表・専修大学)
報告:大林浅吉(香川県退職教職員協議会会長)
:福田誠治(教育総研運営委員・都留文科大学)
:河野睦子(徳島県教職員)
:寿見ひとみ(徳島県保護者)
第28回教育文化フォーラム『学力テスト・学力問題を考える』が、2007年11月17日に徳島県教職員組合と共催で、徳島市で行われた。
1961年から実施された「全国学力調査」(学テ)は、多大な弊害を教育界にもたらし、1966年を最後に中止に追い込まれた。その学テが本年4月約40年ぶりに復活、10月24日、文部科学省は都道府県ごとにデータを公表した。わたしたちが懸念したとおり、事前に学テの準備や対策が行われ、当日は不正行為も一部で発生。障害のある子などが学テの対象外にされたり、成績が下位になった府県では、学テ対策の強化を教育委員会が表明するに至っている。
本シンポジウムは、かつての学テと今回の学テで生じた多くの弊害を確認しつつ、わたしたちが求める学力とは何か、を考えるために開催された。
シンポジウムに先立ち、大林浅吉さん(香川県退職教職員協議会会長)から、40年以上前の「学テ闘争の記録」の報告がなされた。40年前の学テで、香川県は「日本一」になったが、大林さんは、早朝と放課後各1時間の「学テ対策学習」など学校教育が学テ対策一本になった実態を紹介しながら、教職員の評価(勤評)と学習指導要領の法的拘束化、そしてそれに反対する教職員組合つぶしが一体となった戦後の教育史を俯瞰し、今日と同じ事態であることを浮き彫りさせた。
ついで、嶺井正也さん(教育総研代表・専修大学)のコーディネートで、大林さんを含め、福田誠治さん(教育総研運営委員・都留文科大学)、河野睦子さん(徳島県教職員)、寿見ひとみさん(徳島県保護者)によるシンポジウムが行われた。
福田さんは、「競争して学力を上げる」などというのは教育学からきたものではなく、新保守主義(管理)と新自由主義(知識は買う)が一体となったもので、教育基本法改悪体制そのもの。「競争しないでPISA世界一」のフィンランドの教育を紹介。今回の学テ復活の直接的契機はOECDの「PISA2003」であるが、PISAが求めている学力の形成は、文部科学省の今回の学テではとうてい行い得ない。それに類した「B問題」が出題されたが、PISAとは異なるし、これも一斉テストで計られる限り、その意図するところは浸透しない。そもそも、「テストで身につくのが学力」とはいえない。数値されるものは数値させるものしか答えないし、そこしか学ばないので、長い時間をかけてやるものはしなくなるだろう、とした。
小学校教諭の河野さんからは、今回の学テについては学校から保護者に説明する体制はなかったが、保護者から、「学校として受けない選択肢はないのか」「プライバシーの侵害はないのか」「なぜ保護者に説明しないのか」等の質問が出された。他方、県教委から「予想される問題」として練習したらどうかとされたが、学校では対策は一切行わないと決めた。子どもには不安があったし、B問題は難しかった。結果がどのように使われるかが心配である。皆が交じり合って学ぶことこそ、幅広い学力がつく。一緒に考えあうことが大切。それを学テで切捨てるのかと問題提起された。
中学3年生の保護者である寿見さんは、家庭の状況も調べられているが、学校からは事前に何の説明もなかったし、知らされなかった。最初に説明がなかったのだから公表してほしくない。結果は子どもごとに国数の2枚の回答と、そのよみかたが記載された合計3枚を渡されただけ。この学テの結果は子どもにどのように生かされるのか、学力競争は反対である。子どもの「やる気」をささえるのが大事である。そして学びは人と人との関係が大切であると指摘した。
大林さんは、全国平均・香川県平均・坂出市平均と本人の点数が示されたものが子どもに示されたと報告。今回も前回と同じで、教育基本法改悪・教育三法改悪・教員免許制度導入が一体となったもので、求めるものは文科省の求める学力である。来年もやるというのであり、狙いは日本国憲法改悪であるとされた。
会場からは、日本の場合、PISAなどで示される義務教育段階の学力は高いが、成人の学力は世界的にみて低い。このギャップこそ「学力とは何か」の問題だと43年前の学テ闘争で「点数にならない教育」をして左遷された元小学校教員から意見が出された。さらに、「教員が(学テの)おそれを克服することが必要。それはいつでも、どこでも自分の作り出す授業にたじろがないことだ」という意見が教員から出された。
このように、今回のフォーラムは、最初に述べた趣旨「学力テストの弊害」と「学力とは何か」を十分考えられる会になった。